『ドラゴンインストール』が言わば諸刃の剣であることなど、ソルはとうの昔に気付いていた。実際は思い知らされたと言う方が正しい。
乾いた風が吹く辺境の市街、安宿を求めて暗い裏路地を歩いていたソルはふと己の手のひらを見つめた。傾いた宿屋の木製の屋根から覗く月の光がいつもより青白く指の輪郭を浮かび上がらせ、今宵は満月であることを思い出させた。適当な寝床を確保するつもりだったが、予定を変え、郊外へと踵を返した。
己のような賞金稼ぎがうろつく街である。夜になれば住民は外に出たがらない。目星をつけて少し市街地から離れれば、人気(ひとけ)も街灯も全く無い森の入り口をすぐに見つけることができた。
人ならざる身とはいえ、森の中はわずかに肌寒かった。道の途中、足で適当に枯れ木を集め火をつけておく。更に深くへと足を進めると冷たい風が頬を撫でたので、置いてきた焚き火を振り返る。パチ、という枝の弾ける音が聞こえた。ソルは橙色の影を確かめると、再びけもの道を踏み分け始めた。
木々が少し開けた場所まで来て足を止める。周囲を軽く見渡した。
ここでなら誰にも気付かれない。これから行うことも簡単な儀式のようなものだ。時間もそうかからないし、問題無いだろう。
中央の大きな岩の前に立ち、ため息をひとつついた。
「かったりぃ……」
ならばやらなければいい。ただ、剣は上手く振れるか日常的に握って確かめる必要がある。
それが例え諸刃であろうとも。
静かに目を閉じ、『額』に意識を集中する。
周囲の木々で眠っていた鳥が一斉に逃げ出すあとの静寂を待った。
気だるげな動作で額に手を当て、そのまま頭部に巻き付けられた『ギア細胞抑制装置』を一気に剥ぎ取る。
重みのあるそれを岩の上に放り投げ、正面から見据えた。
抑制装置を外してしまうと、数秒と待たずに体の先端という先端が熱を帯び始める。これを合図にわずらわしい時間が訪れるのだ。
だが闇に響く舌打ちの音はどうしても虚しい。月の出る夜、自ら枷を外し、変化を受け入れているのは他でもない自分自身だからだ。
ざわざわと音を立てているのは、風に揺れる木々なのか。それとも全身の皮膚なのか。
背の高い針葉樹の隙間から、満月が覗いていた。
その月の光を、岩上の紅い鉄がうるさく反射する。己が罪を忘れるなと叫ぶように。
長く伸びた前髪が視界に落ちてきて、その光景を遮った。
ギアの力を発露させるとき、姿の変化は毎回指先から訪れた。
爪と皮膚のあいだから太い炎、あるいは鋭い電流を捩じ込まれたかのような強烈な熱の感覚が、両手全ての指先から3秒ほどかけて腕を這い上がる。熱が喉へ到達すると、そこから頭と背中の二手に分かれ、頭へ上った熱は眉間と頭頂を貫き硬質な触角となり外気へ突き出る。ソルはそれをツノなどと呼びたくはなかった。
背中を貫通した熱はそのまま左右の肩甲骨を掻き分け、巨大な翼となって一気に放出される。その特有の衝撃はヒトのままでは一生をかけても体験できないものであり、何ものにも例えようがなかった。ソルはそれを快感だと思いたくはなかった。
この時、両足先からも同様の変化と感覚がソルの体を襲い弄ぶ。かつては太過ぎる尾のようなものまで発現していたが、体内に、上手く仕舞っておけるようになってしまった。
そうして竜の姿に順応していくのだ。力を解き放つたびに、変化が早くなっていく。恐ろしくはないが、胸騒ぎがしていた。もっとも、胸の心臓部からは人間でも竜でも無い、兵器としか言いようのない太い鎖が『生えて』いる。騒ぐも何もないのだが。
身体が熱い。身体が、脚が、翼が、額が、喉が……
「オヤジ?」
背後から、青緑色の宝石の視線を感じて振り返る。
宝石は二つではない。ひとつは幼い顔と身体には似つかわしくない大きな眼帯に隠されている。
ソルの面影を残す灼赤の竜は低い声で、静かにその持ち主の名を呼んだ。
「シン」
「あ、お、オヤジ」
名を呼ばれた少年は、返事を少しためらった。無理もなかった。口と呼べる部位が見当たらず、開ける動作も無かったからだ。
だがソルはこうしてオヤジ、などとと呼ばれると、いつも少しだけ地に足がつく心地がした。
「起きてやがったのか」
「うん。なんだかさ、目の奥がざわざわして」
「焚き火の前で寝てろっつったろ」
こうも簡単に『見られて』しまうとは、ソルも想定していなかった。
いつか見せてやらなければとは思っていた。
実の父親からも了承は取ってある。隠す必要はない、だが幼いので驚かすような真似はするなと釘を刺されていた。どうやら約束は守れなかったようである。
待て待て、守る必要なんざどこにある?これは事故のようなものだ。
わざとらしくため息をつく。口らしい部位は、相変わらず見当たらない。
「……よく俺だと分かったな」
「なんで?」
子供は時に残酷というのは真実だ。
ソルは金の眼を少しだけ閉じたが、すぐに眉間に皺を寄せた。
足元の草は焦げてしまっている。
「そうだな。普段からバケモンに変わりはねえ」
シンは言い終わるのを待たずに、綺麗に揃っているのが気に食わないソルが雑に切りさばいてやった髪を揺らしながら、吸い寄せられるように歩み寄って来た。
ソルは思わず身を引いた。外見はまだまだ幼く背も小さい。古ぼけたぬいぐるみ…ダイコンのようなサムライような形状の…を片腕に抱きながら少しずつ近寄ってくる。膝の絆創膏が痛々しい。傷はとっくに消えているのだが。
世話をしてくれている父代わりの存在が今や異形の化け物だ。小さな頭では咄嗟に処理しきれないのだろう。
小さく息を吐き、変身を解除しようとする。腕に力を込めた。
幼子が口を開く。
泣き出されては面倒だと思った。
「きれいだ」
紅い竜は、動きを止めざるを得なかった。
「うん、やっぱり。きれいだ」
「……」
「さわってもいい?」
「やめろ」
ソルは驚き紅く燃える脚をそっと引いた。今の身体には大きく鋭い爪がある。
そうだ、このガキの母親は”アイツ”だ、とソルの脳裏に哀しげに微笑むギアの姿が浮かんだ。驚くことはなかった。形容しがたいギアの異形を多少見慣れているだけだろう。あの母親……尾こそ黒く異彩を放ってはいるが、一見天使のような羽と、深緑と湖面の色を混ぜたような美しい色の髪を持つ、あれの子供ならば。
いや、それならば、いまの言葉は筋違いなのではないか?
「……きれい、だぁ?」
「うん」
「よく見ろ全然違うだろうが。テメェの母親とは」
「そうだけど」
「……ついに両眼ともか?」
「あ!悪く言うのか!?おれの目のこと!」
「ああ悪かった、悪かった。しっかり見てそう思ったんだな?」
「うん!」
「……頭のほうか……」
「あ!またアホとかバカとか思っただろ!」
オヤジのばか!あほ!という実に迫力のある怒号が森に響く。この子供は学こそ足りないが、勘だけはいい。
ならばなおさら訂正し教育しなければならない事態だ、とソルは考えていた。
この男はかつて権威ある大学機関で科学者として(のちに実験台として)名を馳せたが、教員職への適性は『E』だと学力測定AIは判定を下している。
「いいか。こんな奇妙な姿で会話をしてくるギアは他にはいねえ。大抵は喋れねえか、仮に喋ったとしてもこんなヒトだかドラゴンだが……何なんだか分からねえ格好はしてねえんだよ」
ソルは少しだけ翼を揺らした。ふわりとした風がシンの前髪を踊らせた。
「そうなんだ」
「だからお前の感想は間違ってる」
「まちがってる?」
「ガキは泣いて逃げるのが正しいんだよ」
「そうだったのか!?」
シンが余りにも心から驚いたという顔をしたので、笑ってしまいそうになったのをこらえた。
「危険が迫ってんだから、そうするほうが人間の本能として利口だ」
「おれはリコーでも、ニンゲンでもないのに?」
目の端で、紅い鉢金が反射した月光がうるさく喚(わめ)く。
己の罪を忘れるなと。
「おまえの父親は人間だし、母親だって半分は人間だ」
「じゃあオヤジは?」
「見りゃわかるだろ」
「なあ、むずかしいよ。誰がニンゲンで誰がニンゲンでないかとか、むずかしい……」
シンは少しうつむき、唇をとがらせた。心底分からなくて、混乱している時の仕草だった。
「さっきみたいに変に威勢を張るのもいいが、それはもう少しデカくなってからで」
「あのさオヤジ」
この子供の目が宝石だと感じるのはこういう瞬間があるからだった。
ふとした時に鋭く輝く。磨けば強くなることは明白だった。
罪を裁くあの迅雷の色に似ている。
ソルは態度にこそ出さないが、本能的にそれを畏怖していた。
認めてしまうと、畏敬の念に近い。だから畏れよりも、この目をなにか大切な宝物のように感じていた。
「オヤジはおれが弱いから、強がってるって、思ったんだな?」
「じゃなけりゃあんな妙なこと言わねえだろ」
こんな姿を見て、とソルは両手をひらひらと広げる。
「じゃあ間違ってるのはオヤジのほうだ」
「……」
「オヤジをこわい!と思うことってすっげーたくさんあるけど……、そういう時ってさ、ゲンコツからあたまを守らなきゃ!とか、つかんで投げられるからにげなきゃ!とか、そういうことしかパッと浮かばないよ」
リコーじゃないからさ、とシンはぬいぐるみを持っていないほうの片手をひらひらと広げて真似してみせた。
「おれが『きれいだ』って言ったのも、おれのきもちだ。間違ってなんかない」
ソルは己の翼が震えたのを感じた。長く変化しすぎたのかもしれない。
いやそれ以上に、これから気付いてしまうであろう事実を受け入れなければならないことに、狼狽えてしまったのかもしれない。それこそ、人間だった頃のように。
「もっと知りたい。オヤジのこと」
「……知ってどうする」
「オヤジみたいになりたい」
「ハッ、適当言うんじゃねえ。こっちから願い下げだな」
ソルは、視界が紅くなっていくのを感じていた。
シンを、早く遠ざけなければならない。
なのになぜ、この子供は俺に食い下がる?早く逃げてくれなければ。
なのにどうして、ソルの脚も動かなかった。
「それに、危険が迫ってる?なんて思わなかった。あったかいって思ったんだ」
「こんな、バケモンが、目の前にいるんだ。逃げ、なきゃ、殺される、ぜ?」
「オヤジはそんなことしないだろ」
ソルが少しふらついたように見えた。燃える目が、暗闇の中で金糸を引いてゆらりと光った。
「教育が、必要のよう、だな」
ソルは頭から生えた、小さい翼のような2本の触覚をぶるりと震わせた。
まるで炎の鱗粉をまとった蝶の羽根のようだと感じていたシンだが、周囲の温度が劇的に上がるのを肌で感じ、見蕩れている場合ではないとすぐに気が付いた。
巨大な翼を一気に広げる。周囲の木の枝は熱風を受けソルを中心に放射状にしなった。
燃える右脚を一歩踏み出せば、足下の岩は砂糖菓子のように崩れた。
表情の読み取れなかった顔から、ようやく口らしきものが、
がば、と開いた。
人型の竜は喉を逸らし、天に向かって咆吼する。
獣の低音と高音と、男の悲鳴がない交ぜになったかのような叫びに、空間が震え、木々は涙のように葉を散らした。その声を聞き頭を垂れない獣はいなかっただろう。
見上げた天に忌々しい満月が見えた。あれほど紅い色をしていただろうか?
だがすぐに砕ける。砕けろ、砕けてしまえ。
ソルのような竜は、その事しか考えられなくなっていた。
シンは、動けなかった。
両足が震えて片膝をついた。
「オヤジ!」
聞こえていないのか、咆吼は止まなかった。
シンは衝撃で吹き飛ばされそうになったが、幸い竜の真下にいたためぬいぐるみだけが吹き飛び背後の木に激突した。ちまき、あとで謝るから!そう言って前のめりに倒れ込み、なんとか竜の右足首にしがみついた。
その瞬間シンは、母がベッドで読んでくれた世界図鑑の、大きくて真っ赤な火山の絵を思い出した。
この中に飛び込めば、とっても熱いです。誰だってしんでしまいますよ。
脳裏に母親の優しい語り口調がゆっくり流れた。
子供はまだ走馬灯という言葉を知らない。
「あっ!!あああ!!」
熱くて熱くて、たまらず叫んでしまった。
肌が焼ける変な匂いがした。こんなに痛いと思ったことは短い人生ではじめてだ。
痛くて、熱くて、一体何にしがみついているか忘れそうだった。
何度か離れようともがいてしまったシンは後にこの時のことを、『我慢強さが足りなかった』と述懐している。
けれど大事なことを思い出して、なんとかまた腕を回して、足首にしがみついた。
だってこんなの、オヤジのほうが、もっと熱くて痛いはずだから。
「オヤジ……きいてくれ!!」
その時だった。
勇気ある少年の、証明せねばなるまいという気持ちに彼自身の右目が呼応した。
眼帯が焼き崩れ露わになったその赤い目は、竜とは違う炎の色を宿していた。
いや、それは炎ではない。
黒く、鋭く、そして熱い、雷だった。
「オヤジ!!おれは、オヤジのこと、こわいけど!ほんとうに、…っ!ほんとうに!」
最初に、きれいだ、って、思ったんだもん。
それは、嘘じゃないんだ。
シンは、嘘をついたことがなかった。それが自慢だった。
おやつを盗み食いしたとき以外では。
少年の目から伝った黒雷が、竜の脚を伝い、天に向かって走った。
紅い翼が、感電したように数度明滅した。
その足下で少年は叫び続けた。
声が出たのか、出ていないのかも分からなかったが。
この、美しい生き物に、伝えなければならないことがある。
伝えなければ、かなしいままだ。
「強がってなんかない、オヤジのこと、もっと、もっとおしえてくれよ!!」
いつだったか、シン、という名前のことを考えたことがあった。
『罪』の響きを持つこの名は、同時に古代文明における月の神の名でもあるという。
紅い竜は、吸血種の老紳士が授けた太陽神の名を気に入っていた。そんな大仰な言葉をただの罪人である己が名乗るという滑稽さがなんだか笑えてしまって、名乗ることにしたのだ。
闇夜に紛れ陰に隠れ、人間を避けて暮らしてきた者にとって、月の光は邪魔だった。
身に纏う赤に、己の罪を自覚しろと、うるさく光を反射させてくるからだ。
だが男は決まって満月の夜を選んで、異形の姿を解放し、存在の確認を行ってきた。
その理由は考えないようにしていた。
己が罪を照らせと、自ら望んでそうしてきたのだ。
贖罪を望んで、滅びを受け入れたくて、けれどそれは許されない。
何も残せない自分を悔やむことに依存していたのではなかったのか。
足下で、託された希望が何かを叫んでいた。
太陽だとか、月だとか、俺達はそんな立派な存在ではない。
歳も、気が遠くなるほど離れている。
だが、光をうるさく反射させ合うには、ちょうどいい。
馬鹿同士という点では、似たもの同士かもしれない。そう思った。
視界の紅が引いていく。
木々が揺れる音が無い耳に戻ってくる。
何も残せないと思っていたのに。
「俺の負けだ」
シンは足下から男の顔を見上げた。
髪は足下まで伸びてはいるが、いつもの養父の顔に戻っている。
シンは泣いてしまいそうだったが、なぜか、この養父の方が泣いてしまうのではないかと思ってしまって、ぐっとこらえた。
男の名を呼ぼうとした瞬間、雨に打たれた炎のように、翼が煙を纏って消えていった。
赤黒い肌は、首から胸、腕というように徐々に人肌に戻っている。どういう訳か、グラデーションのようにいつもの赤いジャケットに白いジーンズ姿が現れた。
熱塊だった足下も、人間の素足になっていた。靴だけは、燃えてしまったらしい。
シンはしばらく呆然としていたが、しがみついたまま、ふにゃっと笑った。
「オヤジ、おかえり」
竜は、ソルは、まだ幼い肌の酷く痛々しい火傷を、目に焼き付けた。
普段から拳で殴り合うような生活をしていることはソルもシンもお互い様だったが、それとは訳が違った。己の炎は、帰りを待つ子を燃やすためのものではない。
父は、怒るだろう。母は、嘆くかもしれない。最初から、この子に親愛を篭めた呼称を使われるような資格など無かったのだ。
だがソルは、思わずしゃがみ込みその身体を抱き上げ、頬を寄せてしまった。
獣の親が、その子にするように。
「馬鹿だな、おまえも」
「うん、ちょっとあつかった」
「少し寝ていろ」
「そうする。オヤジ……おやすみ」
緊張が解け脱力したシンを抱きかかえたソルは焚き火の方へ戻ろうとし、抑制装置のことを思い出した。
装置のことを忘れていた自分に、そしてこの幼子の放った力に驚いた。抑制装置がなければ容易に人間の姿へは戻れない。
もっとも、戻れなくなるまで変身することなど無かったのだが、思いのほか『馴染んで』きてしまっているようだった。この剣は柄が燃えているので、握るだけで怪我をする。
振り返り、岩の上から重みのある紅い額当てを拾い上げ、肩に担いだ。
シンの火傷は、少しずつ癒えてきている。自分たちはそういう生き物だ。
すまなかった。聞こえていないと思いつつ、ソルは小さく呟いた。
すると乾いた小さな唇からかすかに返事があった。
「あし、さわらせてくれて、ありがとな」
……ああ、気付きたくなかった。
己の恐ろしい姿を、綺麗だと言い放つこの子供には、同族の、竜の素質がありすぎる。
これから確実に長く、永い、数奇な運命を生きていくのだろう。
同じ道を歩ませたくはなかった。月の光を避け、暗い道をわざわざ選んで歩くような生を。
だというのに。
「なぁに言ってやがる……」
それでも、どの生き物よりも、この子供は優しかった。
この子自身が月の光ならば、続く夜道も怖がらずに済むのかもしれない。
夜が明けたら新しい眼帯を作ってやろう。
もっと丈夫な、業の炎にも負けない輝きに見合ったものを。
少年はそれを知れば、今日のことなど忘れたように、じゃあ、すっげーかっこいいのがいい!とこちらを急かすだろう。
うるせえ、黙って待ってろと拳骨を食らわせ半泣きになる顔まで想像したソルは、今度こそこらえきれず、少しだけ笑った。
そういやさっきは、泣かなかったな、おまえ。
素足で焦げた草を踏む。己の靴も、新調しなければ。
面倒ごとが次々増える。
また冷たくなってきた夜風に紛れて、ソルは得意のため息をついた。
月は太陽が残した光で輝くということなど、太陽以外の誰もが気付いている。
おわり